三つ目の場所(1st Floor Day time)

愛知県刈谷市中山町にあるコーヒースタンド&カフェのインテリアデザイン。今回で3店舗目のデザイン依頼となるオーナー。初めて現地確認に行くと、出店場所となる建物は交通量のさほど多くない、のどかな雰囲気の交差点に位置していた。その場所に建てられてから数十年は経ち、特に主張することもなく街に馴染んでいる建物を見た時に、コーヒースタンドとして営業し始めてからも、存在感を主張することなく街の一部として馴染んで、街行く人がふっと立ち寄れるようなお店が相応しいと考えた。昔の街にはあったお婆ちゃんが小窓からタバコを売っている小さなタバコ屋さん。それは建物、建造物というよりは風景に近い。今回のお店においても建物をデザインするということではなく、風景、街角をデザインするということを意識した。1F部分の外壁に関しては街角との障壁になるため、一部撤去し、ガラスの大開口とし、床に関しては屋外の施工材料である白砂利を敷いて、室内でありながらも大きな軒下のような場所、屋外のような屋内空間として、前面道路、交差点とのつながりを強めた。コーヒーカウンターは全面鏡面貼りとした壁にコーヒーを提供する小窓を設置した。鏡に映り込む街の風景の中からコーヒーを提供するという、不思議なスペースは風景に馴染みつつも、微妙な違和感もあり、街行く人が足を止める。またオーナーからは建物の端に神社を作りたいという要望もあり、建物の一部に三つ目の神社なるスペースも設置している。こちらはコーヒーを飲んだ後のコースターを絵馬に見立てて願い事を吊るす場所となっている。出来上がったお店は目立ったデザインはないが、街に馴染んで、それでいて道行く人が少し気にはなるお店になったと思う。多くの人がこの街角で足を止めてくれることを期待している。

インテリアデザイン  :柴田真和  中神さとみ(CARAMEL inc.)
照明設計       :杉浦貴之(コイズミ照明)
施工         :森岡泰亮 宮嶋茂(Relation)
竣工写真       :植村崇史(植村崇史写真事務所)